乙一「GOTH−僕の章」

いやぁ、サイコミステリはオモロイやねぇ。
言葉の端々から滲むダークサイドな雰囲気は、読んでると徐々に自分の周りを見えなくさせる。
あまりにも現実からかけ離れると、客観視して読んでしまうのでそういう現象に襲われることはないのだが、この「GOTH」くらいの非日常っぷりは心地よく現実に影響を与えるやね。
何かとサイコな部分が印象的な乙一だと思うのだが、本格ミステリ大賞を受賞したということで、この作品はミステリとしても結構面白い。
どちらかというと、物語に読者が入り込んで、登場人物たちと一緒に考えるという感じではなく、叙述トリックが多用されているところが、ホラーやサイコな感覚を感じさせる所以だろう。
あとがきを読んでいて思ったのだけど、この作者、自主映画を作ったりしているところから考えるに、文章も確かに映画っぽい演出をしている事に気が付く。
場面と登場人物の心情を上手く混ぜての描写に、こっそりとフラグを混ぜ込んだり。
短編集であるこの作品ではあるけれど、主要人物は1冊を通してほぼ(?)一緒であるので、短編シリーズといった方が良いのかな?
どの作品も面白い短編集ってのは、実は少ないんだよね…。
その中のひとつにこの作品は数えて差し支えないね。