麻耶雄嵩「翼ある闇」

 読了〜。う〜んと、サブタイトルにやられた感覚。最後に語られる最初の殺人で起きた奇跡は、ちょっといただけない感じがある。これを押し通すのであれば、作品の雰囲気全体をその方向に持って行かないと、浮き過ぎてダメだろうと。探偵の口調や、引用、隠喩、館とその住人の非現実性など、一つ一つのネタは良いのだけど、全体をつなげて読むとちょっと纏まりが無さ過ぎてツライ。解説でもちょっと触れられていたけれど、色々なものを詰め込みすぎた感じがして、一冊で楽しめるのは読者としてありがたいが、1つの物語としての濃厚さが無くなるデメリットがある。オーラスのエピローグ。これには、ちょっとアンフェアさをやはり感じるので、それほど意外な結末に感じられなかったのが、辛口批評の原因だね。

事件を彩るクラシックなどのパーツの書き込み方と、キャラの作り方は手法を知っているみたいなので、次作では化けてるかもという期待がある作家さん。

翼ある闇―メルカトル鮎最後の事件
麻耶 雄嵩

講談社 1996-07
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